tayo x OIC 産学連携ピッチイベント 参加レポ

この記事に関して

・株式会社tayoでは福島県の自治体と連携して大学院生向けの産学連携のインキュベーションプログラムの運営をしています
・でもそもそも「産学連携のインキュベーションプログラム」自体、大学院生とか若手研究者からするとよくわからんはず
・既にいくつかイベントをやっているので、プロジェクトの雰囲気だけでも感じ取って頂くために、司会の佐伯さんにお願いしてイベントレポートを執筆いただきました
・興味持ってくれた方は、是非ご応募を!!

みなさん、こんにちは。大学院時代は「暗黒バエ」という厨二心をくすぐるハエの研究をしていた者です。

先日「辺境キャンパスピッチ!森 vs 海」というイベントで司会を担当したのですが、司会の立場を忘れて研究ピッチに聞き入ったり、ガチ質問してしまうほど、とても熱いイベントだったので、参加者目線でレポートを書いてみたいと思います!

このイベントは、OIC Cleantech Challengeというプログラムの中で実施される「大学院生や若手研究者による、クリーンテック関連領域の研究ピッチイベント」の第一弾です。

集まったのは、演習林や臨海実験所で研究している院生や若手研究者の皆さん。それぞれの研究ピッチの後、森チームと海チームにわかれて、簡単なアイデアソンが行われました。

ダイジェスト動画はこちら

森チームの研究ピッチ

まずは森チームの研究ピッチからご紹介します!

阿部隼人さんの研究ピッチでは、研究内容の紹介に入る前に、日本の森林について紹介されました。

これだけ豊富で多様な森林がある日本だからこそ、森林に関する研究も盛んなのですね。

研究テーマは「気候変動や人間活動によって生じるかく乱は、樹木の枯死を通じて森林が持つ様々な便益にどのような影響を与えるのか?」というもの。同じ生物学の研究でも、ハエの行動を研究していた身としては、生物が死んだあとに環境に与える影響というのはあまり意識したことがなく、大変興味深かったです。

しかし自分の専門外の分野になると「実際どんな感じで研究するんだろう?」というのがなかなかイメージできません。阿部さんの発表では、実際の調査や分析の様子の写真などもふんだんに使われていて、とてもわかりやすかったです。

自分の専門分野以外の研究の手法を聞くのってそれだけでワクワクしますよね!しかし同時に、広大な森林相手の研究は大変そうだなという印象も受けました。

そしてここからは、卒論〜現在挑戦中の博士論文までの内容をギュッとまとめて(研究ピッチは7分!)お話いただきました。こちらは修論の内容。

シカの増加によって土壌浸食が発生し、ブナの根が地上に露出することで、樹齢100年を超えるブナが直近10年で衰退・枯死の危機に瀕しているそうです。動物が植物を食べることそのものではなく、食べた結果どうなる?というところがこれまた興味深かったです。

阿部さんが所属されている九州大学農学部附属演習林では、一緒に演習林で研究を行う大学院生(修士・博士)を募集されています!気になる方はこちらから研究室見学の申し込みができます!


続きまして、同じく森チームの齋藤大さんは、ドイツのフライブルク大学より参戦です!

フライブルクは林業が盛んな街

齋藤さんのテーマは「樹種多様性」。ドイツの実験林を使って、複数種を植栽する混交林の可能性について研究されています。

森林の種数が増えるほど、生産性が上がるということはこれまでの色々な研究で明らかにされているそうです。ただし、枝や幹などの地上部で見られる生産性の向上は、根に着目すると見られにくいとのこと。

なかなか複雑な樹木多様性と生産性の関係

さらに樹木同士の相性にも違いがあり、その組み合わせによって樹木多様性がもたらす効果やその大きさはそれぞれ異なるとのこと。

さらに、樹木は成長するのに何十年もかかることもあり、一つの研究成果が出るのにも時間がかかります。自分の研究対象だったハエは10日で1世代だったのが、いかに有難かったのかを痛感しました。。

海チームの研究ピッチ

対する海チームの発表には、個性豊かな様々な生き物たちが登場しました!

こちらは私、佐伯イチオシの生き物、ヒガタスナホリムシです。

発表者の福地順さんは、環境省レッドリストで準絶滅危惧種に指定されているヒガタスナホリムシの分布を、環境DNAを使って調査しているそうです。あ、イチオシの理由はかわいいからです。

続きまして、ヒメキンカライソギンチャク。

今年の4月に新種として発見された、ヒメキンカライソギンチャク。ヤドカリと共生するイソギンチャクなのですが、この画像右の貝殻は、このヒメキンカライソギンチャクが作っているそうです!見た目から生態まで、海には本当に面白い生き物がたくさんいますね。

他には、ナマコ類に寄生して体表上で生活をするというナマコウロコムシ、そしてウミヘビやサンゴに関する研究の発表もありました!

海チームの研究ピッチでは、ウミヘビが泳いでいる様子やイソギンチャクが動いている様子の動画も使われていたり、限られた発表時間の中で印象に残る工夫が随所に見られました。

アイデアソン

全員の研究ピッチが終わった後は、アイデアソンの時間です。「このメンバーで起業するなら!?」というお題で、森チーム、海チームにわかれてディスカッションを行いました。

初対面のメンバーが多いこともあり、まずはアイスブレイクの時間。「辺境あるある」をみんなで言い合うというコーナーが盛り上がっていました。都心から遠ければ遠いほどリスペクトされるという特殊な雰囲気でした。

辺境キャンパスのリアルをもっと知りたい!と思った方はこちらの記事がオススメです▼
辺境キャンパス座談会「海編」:辺境で送る大学院生活のリアル

そして本題に入ると、森チームは齋藤さんの「樹種多様性」の研究をベースに、海チームは上坂奈々子さんの「サンゴの再生」の研究をベースに議論を進めることが決定。「この研究成果をビジネスにするには?」という部分について、様々なアイデアが飛び交いました。

制限時間ギリギリまでディスカッションを行った両チーム、それぞれが考えたビジネスアイデアが発表されました!

◎森チームのアイデア 〜樹種多様性の研究をベースに〜

・都市の緑化をする際の知見の提供

・実験林で一定量の炭素固定が見込めるのでカーボンクレジットとして売買

・実験林の木のオーナーになってもらう

◎海チームのアイデア 〜サンゴの再生の研究をベースに〜

・適材適所で環境に適したサンゴを育てて名産物にする

→寒い場所でサンゴは育ちにくいので工場の排熱を利用する

・工場の排熱でサンゴを育てて炭素固定に寄与

→カーボンクレジットとして売買


20分という限られた時間でしたが、ビジネスアイデア以外にも、その前提となる森や海の現状の課題についても活発に議論されていたのが印象的でした。質疑応答の時間には発表者だけでなく参加者の方からの意見も飛び交いました。

そして最後は、優秀発表賞の投票が行われました。栄えある第一回研究ピッチの優秀発表賞は、サンゴの研究発表を行い、海チームのアイデアソンの中心的役割を担った上坂さんに決まりました!

上坂さんの「山をみることで、海の問題を俯瞰的にみることができるようになった」という感想が、このイベントの意義をよく表しているように感じました。

実はアイデアソンって何というかバチバチしたような雰囲気になるのかと思っていたのですが、それぞれの知見やアイデアに興味を持ち楽しくディスカッションするようなとてもあたたかい空気に包まれていました!

「クリーンテックアイディアソンvol.1」が開催されます!

「辺境キャンパスピッチ」に続く、研究ピッチイベントの第二弾「環境/防災テックピッチ!」、第三弾「クリーンエネルギーピッチ!」も大いに盛り上がりました!

そしてOIC Cleantech Challengeは次なるフェーズへ。

が11/12 (土)と12/4 (土)に、アイディアソン企画が開催されます!

3人1チームで、大学院生同士で研究成果の社会実装に関してワイワイ楽しみながら議論するイベントとなっております。大学院生の方や、まだ研究してしないけれど将来起業してみたい!という方も対象です。我こそはという方はぜひ、挑戦されてみてはいかがでしょうか?▶︎お申し込みはこちら