香港のドクターは月に35万円もらえる【留学の秋 ~留学座談会、アジア編~】

近年、中国を中心に、研究業界においてアジアの存在感が増しています。
しかし、距離的な近さに対して欧米に比べるとアジアへの留学は情報が少ない現状もあり、「アジアでの研究生活」はあまり身近なものではないのではないでしょうか。

現役のアジア在住の日本人研究者や、アジア圏での留学や共同研究などを行った経験のある方を集め、座談会形式でアジア留学あるあるを共有してみました。

留学の秋 ~留学座談会、アジア編~

本日はよろしくお願いします。まずは、本日ご登壇いただいた皆さんに自己紹介をお願いできればと思います。今回のテーマが「留学の秋」ということで、皆さんの過去の留学経験や現在の研究内容、学術環境などについてお伺いしたいです。

潮 雅之先生(所属:香港科技大学 海洋学科 助理教授)

私は2005年から研究者として活動をしています。元々は京都大学にいて、植物や土壌の相互作用に関する研究をしていました。その後は龍谷大学に移り、非線形時系列解析や環境DNA分析など、データ分析を専門に行っています。その後、再び京都大学に戻り、野外生態系動態に関する研究を6年ほどしています。

そして昨年、海洋生態系に関する研究をしたいと思い、香港に渡りました。2022年9月より、香港科技大学にてラボ運営をしています。香港科技大学は海のそばにあり、周囲の景観が非常に綺麗です。
香港の大学院生は、月に35万円程度の給与をもらいながら研究をしています。香港は地理的にも文化的にも日本に近いことに加え、奨学金制度もとても充実しているため、留学を考えている人には非常におすすめの場所だと思います。

島袋 隼士先生 (所属:雲南大学 SWIFAR 副教授)

私は現在、中国の雲南大学に所属しています。元々は名古屋大学大学院にいましたが、その後はパリ天文台や中国の清華大学に移り、ポスドクとして在籍していました。その後、現在所属している雲南大学にて副研究員となり、現在は副教授として在籍しています。

専門は観測的宇宙論で、主に宇宙の歴史や進化などに関する研究をしています。また、研究活動の他にアウトリーチ活動にも興味があります。最近ではYouTubeに出演したり、一般の方向けの講義をおこなったりして活動の場を広げています。

中島 一樹先生  (所属: 台湾師範大学 国際与社会科学学院 華語文教学系)

私は現在、台湾師範大学にて、中国語教育研究科の博士課程に在籍しています。研究内容は中国語の教育に関わること全般で、中国語を学びたい人に向けた教授法や教材などに関する研究に取り組んでいます。

最近では、主に中国や台湾など中国語圏にルーツをもつ移民の子どもたちの教育についても関心を持っています。また博士課程の研究と並行して、台湾人の大学生に日本語を教える日本語教師としても活動しています。

私が台湾に来たのは2020年のことで、こちらでの生活は4年目になります。台湾は地理的にも日本に近いですし、奨学金制度もかなり充実しているので留学先としては非常におすすめと言えます。私自身も、現在は台湾政府の奨学金を受けながら研究をしています。

太田欽也先生 (所属:台湾中央研究院)

私は現在、登録者数500人弱のYouTuberとして活動しています! が、もちろんこの登録者数では生活していけないので、副業として研究者もやっています笑。

そんなわけであくまでYouTuberが本業というスタンスなので笑、そのつもりで接していただければ。チャンネル名は【Laboratory of Aquatic Zoology】。台湾での研究生活や実験のことなどさまざまな発信をしていますので、良かったら見ていただけると嬉しいです!

現在は台湾中央研究院所属のPIとして活動をしています。専門は進化発生学です。元々は神戸の理化学研究所にいて、ヌタウナギを使った研究をしていました。現在は金魚を使って、人為淘汰が発生過程にどのような影響を及ぼすのかということについて研究をしています。
現在の研究室メンバーは私のほか、ポスドクの日本人とフィリピン人、台湾人のスタッフの合計4人で、主に中国語と英語を使ってやり取りをしています。メンバーそれぞれの言語的バックグラウンドが全く違うため、大変な面もありますね。ただ、研究生活自体はとても充実していて毎日楽しくやっています。

というわけで本日は、潮先生、島袋先生、中島先生、太田先生 (現役YouTuber) の4名の先生方にお話を伺っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

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香港・台湾・中国の奨学金事情

香港の大学院生は月に35万円の給与をもらえる!

それでは、さっそくですがパネルディスカッションを始めたいと思います。まずは、留学を考えている皆さんがとても気になっているであろうお金の話から。奨学金制度に年齢制限があるのかどうか、また給与面については日本と比べるとぶっちゃけどうなのか、そういった金銭面の事情について詳しくお聞きしたいです。

潮先生は現在、香港でラボ運営をされていますが、香港の留学事情はいかがでしょうか。

潮先生:そうですね。まずは年齢制限について、一番スタンダードな奨学金制度には年齢制限はありません。そしてこちらでは大学院生には必ず給与を払うことになっていて、現在は円安ということもあり、大体月35万円くらいが相場となっています。

またこちらでは奨学金制度自体の種類が豊富で、さまざまな条件のものが用意されています。よりレベルの高い奨学金制度に採用されると、さらに1.5倍くらいの金額をもらえる場合もありますね。日本と比べると、学生さんにとって金銭面ではかなり恵まれた環境だと言えると思います。

一方、香港では家賃がとても高いので、留学を考える際はそちらのほうが肝となってくるのではと感じます。院生の場合は大体 格安の学生寮(月 HKD 2,500くらい)に入れますが、ポスドクで来る場合であれば、家探しも非常に重要だと思いますよ。

SNSなどの意見を見ていると、給与が出るのであれば、大学院生でも求められるハードルがより高くなるのではと気になっている人もいるようです。実際に学生を指導される中で、給与の有無による指導者側の意識の違いというのはあるのでしょうか。

潮先生:他の先生方はどうなのか分かりませんが、少なくとも私自身は、給与を払っているんだから特別しっかりやれというような意識はあまりないですね。こちらの院生に対しても、日本の院生に対するときと同じように接しています。新しく入ってくる学生さんの事前知識などのレベルをみても、基本的に日本の学生とそれほど変わらない印象があります。

台湾の奨学金制度は?

続いて、台湾で活動されている中島先生にお聞きします。台湾の奨学金制度についてはどのような印象をお持ちですか?

中島先生:そうですね。台湾の奨学金制度にも香港同様、さまざまな種類のものが用意されています。私自身は現在、台湾政府の奨学金を受けながら研究活動をしています。この奨学金について年齢制限は特に無く、何歳の方でも申請が可能です。

奨学金の内容としては、まず学費は全てカバーしてもらえますし、また生活費についても、それほど多くはないですが出してもらえます。金額は、現在は20,000TWD(台湾ドル)です。今は台湾も物価が高いので、人によっては結構ギリギリの金額かもしれませんが…。

それでも、自炊などしながら堅実な生活をしていればまあなんとかやっていける感じですかね。決して贅沢はできませんが、奨学金制度としては決して悪くないシステムだと感じています。

同じく台湾で活動されている太田先生はいかがですか。

太田先生:そうですね、やはり住むところによって事情が全く変わってくると思います。最近では本当にいろんなものが値上がりしてしまっていて、特に都市部のほうだと金銭的に厳しい部分もあるかもしれません。

ただ、研究資金について、研究室サイドとしても資金源や金銭的な事情はさまざまあるわけなんですよね。学生さんやポスドクを雇いたい場合は予算が必要になるので、研究所から内部資金を貰う、あるいは外部資金を取ってくるなどいろいろなやり方があります。だから留学を考えている人は特に、行きたいと考えている研究室があれば、できるだけ早い段階でコンタクトを取っておくことをおすすめします。

ここで、同じく台湾で活動されている藤原先生からもお話を伺いたいと思います。

藤原先生(所属: 台湾科技大学 副教授):はじめまして。私は台湾科技大学にて、ナノテクノロジーの分野の研究をしています。私からは研究室を運営する立場から、学生さんの確保のしかたや資金事情などについてお話したいと思います。

まず、研究室で学生を雇う際の事情について。留学生側にもそれぞれに事情があります。ベトナムやインドネシアでは修士号があれば大学教員になれるため、正直「どこでもいいから留学したい」という学生も多いです。PI側は学生をリスト化したものを見ながら、各々の成績や事情などを加味した上で、雇う学生さんを選んでいきます。

ただ、ここ数年で資金源の事情が少々変わりました。数年前までは全ての奨学金が大学負担だったのですが、現在は半額をラボ側が負担するという制度になっています。そのため、十分な予算を確保できるベテランの教授であれば、良い学生をたくさん雇うことができます。

ただ、あまり予算を用意できない若手の先生の場合、やむなく研究費を削って奨学金を出すしか方法がありません。そういった事情があり、ラボ間の格差が生まれているという現状があります。

なるほど。学生を雇うための資金確保の面でも苦労する部分が増えているということですね。研究室を運営する側にとってはまさに死活問題と言えるでしょう。貴重なお話をどうもありがとうございました。

中国の奨学金制度は?

では、雲南大学で活動されている島袋先生にお聞きします。現在、中国の奨学金制度や給与面についてはどんな印象を持たれていますか?

島袋先生:そうですね。まず、こちらの大学では、留学で来てくれた院生には指導教員側から給与が出るというシステムになっています。

私はこちらの奨学金事情についてはあまり詳しくないのですが、そもそもシステム上、奨学金に頼らなくても十分やっていける状態にあると感じます。金額としては修士の学生であれば日本円でひと月3万円ほど、博士課程の学生は5万円程度ですね。

3万や5万と聞くと安いと感じるかもしれませんが、学生は皆 基本的に大学の寮に住んでいますし、食事についても、大学の食堂で1食あたり200円~400円ほどで安く食べることができます。そうした環境を考えると、よほど贅沢をしなければ普通に生活していけるかと思います。

また先ほど、給与が出るのであれば学生に求められるハードルも高くなるのではというお話もありましたが、私も潮先生と同じく、指導の際の意識が給与の有無によって変わるというようなことはありません。

もちろん給料をもらえる、もらえないに関わらず研究活動はしっかりやってもらいたいと思っていますが…。それぞれの研究室や研究所には修了の条件となるルールがありますので、そこをクリアするために学生たちは皆一生懸命やっていると感じますね。

なるほど。たしかに食費や家賃などをはじめ生活面の事情が国によってそれぞれ違いますし、時代によっても変動がありますからね。今回はアジア各国の現状を詳しくお話いただき、大変参考になりました。ありがとうございました。

日本と海外の研究生活の違いあれこれ

PI の研究時間と会議時間の割合は?

日本のPIには非常に長い会議時間が求められる傾向があり、研究時間がなかなか確保できないという現状があります。日本学術会議の若手アカデミーの報告によると、日本のPIの研究時間は全体時間の3割ほど、しかもそのうち2割はなんと休日を返上してなんとか時間を補っているという場合もあるのだとか…。

日本ではこのような厳しい現状がありますが、海外ではどうなのでしょうか?

潮先生:そうですね。もちろん大学や機関によって事情はさまざまだと思いますが、私の感覚では香港の大学は比較的研究志向が強く、少なくとも日本よりは施設管理・運営のための会議時間は少ないように思います。

私個人としては、今学期から始まる授業の準備などもあり、現在の研究時間は少なめです。それでも、日本にいる時に比べれば研究にかけられる時間はかなり多いと感じています。それから、事務の人からのサポートも手厚いですね。ハンコが要らないのが個人的には結構ありがたいです笑。

なるほど笑。休暇についてはどうですか?

潮先生:うちの大学では、休む時はきっちり休むという人が結構多い印象ですね。1年に20日弱取れる有給についても、きちんと消化している人が多いです。
あと、これは香港に来るまで分からなかったことなんですが、こちらの休暇の時期については、西洋文化が結構強めな気がします。皆が休みを取るのは基本的にクリスマス時期、それから夏の長期休暇が主なんですよ。一方で、日本では重視されがちな旧正月は皆わりとあっさりしている印象です。また、4月にも1週間くらいまとまった休みがあったりしますね。

続いて、島袋先生にお聞きします。まず、中国の会議事情はいかがでしょうか?

島袋先生:そうですね。まず私が現在 所属している研究所では、そもそも会議というものがほとんどありません。研究所の運営や管理に関わるような会議は、大体年に1回あるかないかというところですね。

ただ、以前所属していた北京の清華大学では、少なくとも今よりは頻繁に会議があったように思います。だからもちろん大学によって事情は違ってくると思うのですが、それでもアジア圏は日本に比べると会議というものが全体的に少ない印象がありますね。やはり日本よりは海外のほうが、研究に使える時間が多い傾向にあると感じています。

なるほど。学生の指導面については、何か日本と違う点はありますか?

島袋先生:指導者側と学生との関わり方、接し方自体は、日本でも海外でもそれほど違いはないと感じています。普段の会話については、基本的には英語でやり取りをしていますね。まあ雑談をする時などは、勉強を兼ねて中国語で話すということもありますが…。

また日本の研究室の場合、抱えている学生の数が多いところでは指導者側の手が回らなくて困るということもあるかと思いますが、現在私が所属している研究所では、新しく入れる学生の数は年間に1人と決まっています。そのため、学生の指導が忙しくて自分の時間がなくなるということはほぼないですね。

続いて中島先生、台湾の研究室の会議事情や研究時間はいかがでしょうか?

中島先生:私は現在 博士課程生として研究をしています。私の所属する研究室の先生の場合、会議が頻繁にあるので研究時間がなかなか確保できずに困っているという話はよくされていますね。また、台湾も少子化が深刻なため、学生の確保のために常にいろんな場所を回って声を掛けたりする必要もあるようです。会議や学生集めなど、研究以外の面でも結構苦労が多い印象があります。

太田先生はいかがでしょう?

太田先生:そうですね。うちでは基本的に月1で運営・管理に関する会議がありますが、正直形式的なものにすぎないことが多いので、私はあまり重視していません。

というか、正直ちょっとズルをしてサボっていまして…笑。ワタシコトバワカリマセン、みたいな。いや分かるだろ!と突っ込まれるんですけどね笑。そんなわけで、全体の会議に出るのはせいぜいふた月に1回程度の頻度です。これは外国人ならではの逃げ方かもしれません笑。

ただ、学生の呼び込みについては少子化の影響もあり、苦労している先生は結構多いと感じています。アウトリーチ活動など、研究以外の活動を通して人を集める必要もあるので大変な面も多いですね。また指導者側のメンバーをみても、台湾出身の人よりも、私のように留学で来ているアジア圏の人の割合が年々大きくなっているように感じます。

飲み会費用は研究所予算から!?

さて、研究室といえば飲み会がつきものということで笑。ここで、海外の研究室の飲み会事情についてもお聞きしたいと思います。まずは島袋先生、中国の大学ではいかがですか?

島袋先生:私が現在所属している中国の雲南大学では、教員が学生と一緒に飲みにいくという習慣はほとんどないですね。最近も、私が「季節のきのこ鍋でも食べに行こうぜ!」と誘ったのに、ついてきてくれる学生は一人もいませんでした…。いや、それは私個人の人徳なんじゃないかというツッコミはまぁ、いったん置いておいて笑。

以前所属していた清華大学でも、時々ランチタイムに一緒に食事をすることくらいはありましたが、日本の研究室のように夜の時間帯に皆で集まって…ということはほぼありませんでした。こちらでは、教員陣と学生が一緒に食事をする機会は、せいぜい研究会に参加する時くらいしかないですね。ただその際も、教員と学生のあいだの線引きは日本に比べるとはっきりしているように感じます。

潮先生:うちの大学では、飲み会や歓迎会にかかる費用を学科の予算から出せるんです。研究室で飲み会をする機会は時々ありますが、日本に比べると雰囲気が大分おとなしい感じがしますね。

太田先生:中国の学生さんは結構いろんなタイプがいますねえ。日本に近い雰囲気で、結構派手に飲むのが好きというタイプの人もいるにはいますし…。僕はあんまりそういうの得意じゃないんで、うちのラボでは絶対やりませんけどね笑。

飲み会事情も国によってそれぞれですねえ…。しかし、いわゆる”飲み二ケーション文化”は日本が一番激しいなんて話もよく聞きますが、研究分野においてもそれは同じなのかもしれませんね。

それから、飲み会費用を学科予算から出せるというのも大きいですよね。日本では大学法人、一般企業を問わず、飲み会の参加費にも謎の年功序列があったりしますが…。そうした意識の差もまた、日本とアジア圏の違いの一つなのかもしれません。

留学のメリットとデメリットは?

留学を検討している学生にとっては、留学によって得られるメリット、そしてデメリットがどんなものなのかが一番気になるところでしょう。実際に海外で活動されている中で、留学の良い面と大変な面は、具体的にどういうところだと思いますか?

言語の壁と、日本にはない文化

島袋先生:そうですね。まずは大変な面について、やはり言語の壁というのはとても大きいと感じています。私は最近、健康診断で異常値が出たこともあり病院へ行く機会が多かったのですが、こちらでは当然ながらいろいろな手続きを全て現地の言葉でしなくてはなりません。日常的な中国語は理解していますが、今回のような場合はやはり、自分一人ではなかなか厳しい部分がありましたね。だから学生さんに付き添ってもらって、必要な時は翻訳をしてもらったりもしました。

これはほんの一例にすぎませんが、やはり英語を第一言語としない国を留学先に選ぶ場合は、言語面での苦労を念頭に置いておいたほうが良いと思います。研究機関の人であれば基本的に英語はできる場合が多いと思いますが、それに加えて現地の言葉についても、できる限り事前に勉強しておくことをおすすめしたいです。

逆に留学の良い面は、日本とは全く違った文化を楽しめるところでしょうか。私ははじめフランスのパリに留学しましたが、特に芸術の面では日本にはない文化を目にして刺激を受けました。一方、現在 滞在している中国は、政治体制などあらゆる面で日本とは違うので、刺激を受けたり戸惑ったりすることもあります。

西洋諸国にしてもアジアにしても、日本にはないさまざまな文化を肌で感じることができて、人として視野が広がります。それは研究者としてだけでなく、一つの人生経験として非常に貴重なものになると思いますよ。

潮先生:私は基本的にこちらでの生活に満足しているので、留学について特に大きなデメリットは感じていません。もちろん島袋先生の仰るような医療の面については、日本にいる時のように手軽に病院に行けないことは、人によっては少々不便に感じるかもしれません。

ただ香港では、完全に日本語対応してくれる病院もかなりあるんですよ。また、もし中国語があまりできなくても、香港では大体8割くらいの人は英語を上手に話すことができるので、実際のところ言語面でそれほど困ることはないかもしれません。むしろ、家賃と教育費が高いことが個人的には結構堪えましたね。

海外の交通ルールにも気をつけよう

中島先生:まず医療面に関して、台湾は保険制度が非常に充実しています。また、潮先生の仰る通り日本語対応をしてくれる病院も結構多いので、そうした面の心配はあまりないんじゃないかなと思います。

個人的に注意しておきたいのは、交通ルールに関する意識の差です。実は台湾の交通事情は、日本とは異なる部分が多いんですよ (※右側走行、左ハンドル、車優先など)。事前に多少は学んでおかないと危険なこともあると思うので、その辺はぜひ気をつけてもらいたいと思います。

家族のことも考えて

太田先生:僕は元々、自分のラボを持ちたいという思いが強かったんです。現在は自分の場所を持てていますし、自分のために比較的自由に時間を使うこともできているので、こちらでの生活について不満や不自由は特に感じていません。

もちろん言語の問題や文化の違いなども考えておく必要はありますが、留学を検討する場合、前提としてやはり研究が好きかどうかというところが一番大きいんじゃないかなと思います。

ただ、自分一人ではなく家族がいる場合は、家族のことについてきちんと考えておく必要があると感じます。家族を連れて留学した場合、家族が生活や文化の違いに対応できるのか、事前にしっかり検討しておいたほうが良いでしょう。

本日は、実際に海外で活躍されている皆さんならではの貴重なお話やご意見をたくさんお聞きすることができ、非常に有意義な時間となりました。日本や欧米とは様々な側面から違いの大きい、アジア留学の実態が垣間見得たのではないかと思います!