【農学分野向け】「若手研究者が5000万円もらえて起業できるらしいよ!!!急げ!!!!!

私たちの暮らしの重要な部分を担う農業。食糧不足や環境変動など地球規模での様々な問題が懸念される今、農業のアップデートが求められています。このような状況の中で、現在盛り上がりを見せているのが「アグリ・フードテック」。農業と食の分野にテクノロジーを掛け合わせて生まれた分野です。植物工場に、培養肉。アカデミア発の技術が今まさに巨大なビジネスを生み出しています。この分野で起業するなら今がチャンス!!!

「そうはいっても起業にはすごいお金とノウハウとかが必要でしょ?そんなのどっちも持ってないし」っていうのが、大多数の若手研究者の正直な感想ではないでしょうか。

そんな中、

・企業を志す若手研究者は5000万円貰える
・ビジネス関連のサポートまでして貰える

というめっちゃ美味しい話があるらしいのです。果たして、それは本当に美味しい話なのか!?裏があるんじゃないのか?というわけで、今回は「アグリ・フードテック」特化の支援プログラムを運営しているSpirete株式会社の渡邊康治さんにお話を伺いました。

Spirete株式会社 渡邊康治さん

1992年よりJAFCOで北米のハイテクベンチャー投資に従事。96年に独立した後、米国でWorldview Technology PartnersというVCの設立に参画。現在は個人投資家として国内外のスタートアップに出資する傍ら、海外ベンチャーの国内事業立ち上げを支援。Mistletoeフェロー、国内外のVC・VBのアドバイザーを歴任。

「アグリ・フードテック」ってそもそも何?

はじめまして。ビジネスなんもわからない佐伯です。まずはアグリ・フードテックとは何なのかについて教えていただけますか?あと5,000万円がもらえるって本当ですか?

簡単に言うと農業と食の分野にテクノロジーを掛け合わせたものです。具体例を見ればわかりやすいかと思います。農業の方では、農作業をロボットを使って自動化したり、ゲノム編集を使った育種なんかもありますね。食の方だと、オルタナティブミート(代替肉)とか培養肉のようなテクノロジーによる食べ物の加工や、販売・配達の工程でテクノロジーを使うものもあります。あと最大で起業資金として5,000万円がもらえるチャンスなのは本当です。

アグリ・フードテックの例

(アグリ・フードテックも5,000万円も)すごい!!

ゲノム編集技術とか培養肉なんてSFの世界みたいですけど、実際にCRISPR-Cas9が2020年にノーベル化学賞を受賞したりとか、培養肉も最近日本で初めて試食されたっていうニュースも見ました。やっぱりアグリ・フードテックは乗るしかないビッグウェーブなのでしょうか?

ビッグウェーブ・・・そうですね、分野や国によっても状況は違いますが、世界的に見て盛り上がってきているのは間違いないです。アグリ・フードテックが広まってきている背景には、二つの大きなことがあるかなと思ってまして。

一つは社会的需要の高まりです。今日まで、農業の工業化が進んだことで作物の大量生産や安定供給ができるようになってきました。その一方で、工業化によってCO2排出量が増えて地球温暖化に繋がったり、水が足りなくなる、砂漠化が進むというように、地球規模で環境が変わってきました。「環境にも配慮した新しい農業を考えなければ!」ということでその「新しい農業」を形にするためのテクノロジーへの需要が高まったというわけです。

もう一つは技術革新によるコストの低下です。生物学やコンピュータサイエンスはこの20年ぐらいでものすごく進んできましたよね。そして、テクノロジーが安価に誰でも使えるようになってきました。

アグリ・フードテックが盛り上がってきた二つの要因

この二つの条件が重なったことで、アグリ・フードテックがビジネスとして成立するようになってきたのです。

世界初の培養肉ハンバーガー(2013年)の製造コストが33万ドルだったのが、今では約9.8ドルまで下がっていると聞きました。一般的なお肉より少し高いくらいなら食べてみたいですし、そう思う人が増えればさらにコストは下がっていきますよね

消費者はそういう風にして判断が変わってくると思いますし、消費者だけじゃなくて政治にも影響を与えるんです。そうなると、結果として企業にも影響を与えていて、大企業もそういったものに対して、積極的に投資をする時代になってきました。

アグリ・フードテックの現状と課題

消費者が変わり、政治が変わり、企業も変わる。アグリ・フードテック分野の成長は、どんどん加速していくのでしょうか?

そうですね。新たなテクノロジーも色々登場してきて、そこに企業がどんどん参入してっていう形になってきてますけれども、今は一つの大きなトレンドという段階で、これから根付いていくかどうかというところです。

それを考えていく上で一つキーワードになるのが「SDGs。今世界で掲げられている目標で、食農分野との関わりが強いですし、これから先、益々広がっていくことは間違いない。だから、投資に対するリターンをすごく慮るアメリカのベンチャーキャピタルも、アグリ・フードテックに対して大量に出資をしているというのもあります。日本は少し遅れているものの、やっていくことはあまり変わらないんじゃないかと。

日本の農業って稲作中心だったり耕地面積も小さくて、それに対してアメリカの農業なんかはとにかく広大な土地があって農薬も飛行機で派手に撒いて、みたいな印象があるのですが、そういう違いっていうのはアグリ・フードテックの分野には影響しないのでしょうか?

日本は農業自体がそもそも弱いっていう考え方はありますよね。肥料とかまで考えれば、食料自給率は実質0%なので輸出国でもありません。だから食料自給率を上げていくんだ!というのも重要ですが、どちらかといえば国のお仕事です。

ビジネスとしてアグリ・フードテックに注力する場合、必ずしも日本を変える必要はないと思います。もちろん日本の農業を何とかしたい!っていう課題感の中で、日本ならではの環境に合わせたテクノロジーを開発するというのもありますけど。それだと結局、海外展開ができなくなってしまう。

なるほど。マーケットは日本じゃなくても良いわけですね!

実際、植物を栽培するプラットフォームとしての植物工場が今すごく注目されて、アメリカでは何百億ものお金を集めている企業が複数社あったりします。あれって実は元々、日本の発想とか技術を使ってるんですよ。それが今、世界に広がっている。

屋内で生育環境を人工的にコントロールして植物を栽培する植物工場

だからこそ、ビジネスとして日本が引っ張っていけてないのが悔しいという想いもあります。研究や技術の面で光るものがあっても、ビジネス展開をしていく上でなかなか勝ち切れない。そういった中でアグリ・フードテックのスタートアップを支援するプログラムを作ったんです。

FOOD & AGRI STARTUP LABについて

いよいよ本題のおいしい話ですね!まずはこのプログラムについて教えていただけますか?

はい。このプログラムは食と農の分野にイノベーションをもたらす技術やアイデアを持っていて、その実現を目指している方に対して、起業のための支援をしていくというもの。具体的には、審査に通過したビジネスアイデアに最大5000万の資金を提供すること、そして資金面だけでなく、事業立ち上げや資金調達に役に立つ知見、それから必要な人材のサポートも行います。実はこのお金以外の部分のサポートがすごく重要です。

確かに、いきなりお金だけもらっても経験がないと何をすればいいかわかんないですもんね

そうなんです。起業の方法も色々ありますけど、例えば大学発ベンチャーの場合に難しい部分というのはまさにそこで、大学の中には事業経験がある人がいなかったり、プログラマー、マーケターとかビジネスをやるための人材も揃っているわけではないですよね。そういう中で、研究者が経営者としてやっていくのはなかなか大変なわけです。

うちの場合、ビジネスをやろうとした時に、専門のアドバイザーをつけられるし、いろんなプロ人材を巻き込んでチームが作れます。また、パートナー企業と連携したりとか、場合によっては経営者を連れてくることもできます。

社長になりたいわけじゃない人もエントリーできるのですね!

社長になる、ならないもそうですけど、プログラムで募集している技術や研究成果というのは、ご自身の研究テーマそのものでなくてもOKなんです。

例えば、自分の所属しているラボで使えそうな技術があって、直接その研究をしているわけではないけれども、自分もその技術を使うことはできる、みたいな。教授って基本的に辞めないじゃないですか。自分のラボで好きな研究をされているわけですし。じゃあ誰が起業するの?ってなったら、そこのポスドク、学生さんだったり、そのラボと関わりがある研究者だったりするわけです。

なるほど。自分自身の研究が使えるかどうかというだけじゃなくて、ラボメンバーだったり、専門の近しい研究者の研究にまで目を向けると、いろんな可能性が眠ってそうですね

実際、かなり眠っていると思います。さっきの大学発ベンチャーの話で言うと、2020年度の大学発ベンチャーの総数は約2,900社だったんですけど、東大、京大、阪大だけで700社を超えてるんですよ。そういう起業文化は大学によってかなり差があります。でも、地方の大学にも素晴らしいテクノロジーはたくさんあります!だから是非、多くの方にFOOD & AGRI STARTUP LABに応募していただきたいですし、その中で良いご縁があればと思っています。

「起業したい!でも別に起業できそうな研究はしていない!そういえば学会で聞いたxx先生の技術はお金になりそうだったな、許可取ってあのアイディアで起業できないかな?」とかもOKな訳ですね。これは挑戦するしかないですね!・・・とはいえ、こういうものにエントリーしたことがない方は「これは出して良いのかな?」とか不安もあるかと思います。例えば「こういうのはNG」というのはありますか?

スタートアップを生み出すプログラムなので、研究費獲得の手段としての応募は対象外ですね。あと、使える技術が生み出せるまでに5年必要というような、研究に時間がかかるものも厳しいです。既に一部でも実現している何らかの技術があって、これを使ってこういうことをやりたい!というのが良いです。

技術や事業アイデアの概要資料、もしくは500字以内の事業説明の文章だけでも応募できるようにしてますので、応募しやすいかと思います。

500字以内の事業説明の文章だけでも応募可能!

必要書類、めちゃくちゃ少ないですね・・・!!Googleフォームの安心感がすごい!

そこはけっこう驚かれたりするのですが、最終的には話をしっかり聞いて判断しますので、応募はしやすいようにしています。また既に色々挑戦されている方にとっては、他のアクセラレーター等に提出した資料や、JST、NEDO等の公的機関による、事業化支援プログラム向けの応募シートも利用できるようにしていますので、それもまた便利かなと思います。

JSTやNEDOのお話が出ましたが、そのような国のプログラムや、他の民間のプログラムと比較すると、どういう違いがあるのでしょうか?

国のものは制度としてしっかりしている反面、採択された後の報告義務がなかなか大変だったり、あと必ずしもハンズオンで事業化のサポートをしてもらえるわけではないというところでしょうか。一方、民間のプログラムはイベント化しやすい傾向があって、採択されるところがゴールのようになることがあります。私たちのプログラムでは、明確な終了時期を決めずに伴走していくイメージなので、そこは違いますね。それぞれに特徴や傾向があるので色々挑戦してみるのが良いかと思います。

どこが良いのかとずっと悩むより、まず応募してみることでわかることもあるということですね!最後に、こういう人を求めています!というところを教えていただけますか?

それはズバリ、想いがある人ですね。技術はもちろん、この技術を使って社会をどうしたいとか、どんなことに役立てたいという部分をぜひぶつけていただきたいです!

研究者って皆さん想いを持って研究されていると思うんです。食農分野で研究されている皆さんは、課題感がある方が多いように感じます。

人の暮らしを支える大切な部分ですもんね

そうですね。その中でも若い世代は当事者意識が強いです。環境問題とか、食を考えても、今のような食生活は送れなくなる。そういう時代が自分たちが生きている間にやって来るんだから、自分ごととして考える。そこの世代間ギャップを感じるからこそ、グレタさんもそうだし、ああやって怒っているわけですよね。

そういう強い当事者意識っていうのは、ビジネスをやる上での大きなモチベーションにもなります。ぜひ若い世代の方々には、飛び込んできてもらいたいです!

そして、本当は私たち世代だって、私には今小さい子供がいるんですけど、自分の子供が将来どんな世界で暮らしていくのかってことをやっぱり考えるし、こういう問題を若い世代に押し付けちゃいけない。だからこそ、このプログラムで若い世代と共に、食農分野にイノベーションをもたらすビジネスを、本気で作っていけたらと思っています。私たちは、日本から世界で戦えるテクノロジーテックカンパニーを創り上げたいと本気で考えています。その想いに共感し、共に挑戦してくれる皆さんからの応募をお待ちしております!

終わりに

なんだかおいしそうな話かも!と飛びついた私でしたが、お話を聞けば聞くほど、研究開発シーズの社会実装のために非常によく考えられたプログラムだと感じました。研究室生まれのテクノロジーが、食と農にイノベーションをもたらすことを、このプログラムがそのきっかけになることを願っております!「農業や食の世界に貢献したい!」「この技術って使えるんじゃないか!?」そんな風に思った方は、こちらのプログラムに挑戦されてみてはいかがでしょうか? 

取材協力: Spirete株式会社
Spirete(スピリート)は、大企業・大学研究機関・フリーランス・副業人材など、多種多様な専門知識や経験を組み合わせ、ゼロからのスタートアップ創出を目指すスタートアップスタジオです。

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