少し前、都立大学生命科学科の准教授採用の倍率が183倍であることが一部アカデミアで話題になりました。
博士学生の支援策などは充実してきましたが、ライフサイエンス系でアカデミアのポストを獲得するのはまだまだ大変です。
しかし、ポスドクや助教から民間企業に移ろうと思うと、「民間企業の経験がない中途人材」という扱いになるので、就活も一筋縄ではいきません。
そんな状況で、バイオベンチャーへの就職は今後博士人材のキャリア構築の上で有力な選択肢になるのではないでしょうか。
今回は、株式会社Epigeneron様の神戸社員4名に「アカデミアから民間企業に移るキャリア」に関してお話を伺いました!
株式会社Epigeneron
遺伝子座特異的ChIP法による創薬ターゲット探索や、ORNi-PCR法による希少な遺伝子配列の検出を行なっているバイオベンチャー企業。研究員を絶賛募集中!
アカデミックキャリアの末に辿り着いたベンチャー企業
まず、研究者の皆様のキャリアなどお伺いしたいです!
研究開発マネージャー 金成(かなり)安慶さん: 私は元々、アカデミアで免疫学をやっていました。分野としては、分子生物学や発生学など、幅広いアプローチを用いた免疫系の成り立ちに関する研究です。
2014年まで東北大学で基礎研究をやっていて、ポスドクを経て助教まで行きました。アカデミアで続けていく選択肢もあったんですが、この辺りで社会実装の方面の興味が強くなってきたので民間企業へ行きました。
Epigeneronはベンチャー2社目で、1社目で得た産学連携の経験を活かして研究開発のマネージャー職を務めています。
主席研究員 石原 宏さん: 私もずっとアカデミアですね。ポスドク、助教、准教授と順調に進み、PIとして自分の研究室も持っていました。ただ、外部資金獲得や論文執筆等のノルマ的なものがあったり、いろいろな難しい事情があり、ちょっとアカデミアがしんどくなってきまして、、アカデミア以外の道も含めて職探しをすることになりました。
民間就職はどんな感じに進めたのでしょうか?
石原さん: Epigeneronは一社目の民間企業で、エージェント経由の紹介です。とはいえ創業者の弘前大学の藤井穂高先生とは面識があり、狭い世界だなと感じました。
山田さんはどうでしょう?
主任研究員 山田宗茂さん: 私もずっとアカデミアです。エピジェネティクスを使った生殖科学や細胞分化、癌研究などが専門で、国内・海外含めてポスドクをやっていました。
日本に戻ってようやく助教になれたのですが、更新期間が短いポストで、結婚して子供もいる状況だったのでこれはキツいな、と。私も2020年に一社目の民間企業としてEpigeneronに入りました。
お子さんもいる中での短期間更新は厳しいですね・・・!
山田さん: ちょうど新型コロナの時期に入社したので、最初にやった仕事は新型コロナウイルスの遺伝子型を特定する技術の開発でした。時代に応じた仕事ができるのはアカデミアとは違う企業の面白さだなと思いました。
技術員の佐藤さんはどのようなキャリアだったんでしょう?
技術員 佐藤直子さん: 私は研究補助員として、色々な会社や大学の研究室で仕事をしてきました。前職は病院で臨床検査技師をしていました。病院では病理検査を担当していたのですが、臨床検査技師としてできる業務がかなり限られていたんですよね。もう少しいろんなことをやりたいと思ったので、Epigeneronを選びました。
「アカデミアからの鞍替え」のためのファーストステップ
皆さんかなりキャリアに苦労されたようですね・・・みなさんの視点は研究者のキャリアを考える上でかなり貴重だと思います。若手研究者にとって、ベンチャーに行く選択肢ってどういうものだと思いますか?
金成さん: 今となって思うのは、「アカデミアからの鞍替え」には大学発ベンチャーが向いているんじゃないかということですね。いきなり大企業に行くとアカデミアとの文化の違いなど色々と大変なので、一旦民間キャリアへのエントリーとしてベンチャーに来て、その後大手製薬などを目指すのは賢い戦略なんじゃないかと思います。
Epigeneronに関していえば、現在の研究員3名は全てアカデミア出身なので、文化的な「民間企業の壁」みたいなものはほとんどないです。とはいえ民間企業ならではの決まり事や仕事の進め方は学べる。言い方は悪いですが「踏み台」みたいな使い方をしていただくのもいいのかな、と思います。
石原さん: やはり、任期無しのPIになれるかどうかでつまづく方は多いですよね。最近は教授職ですら任期付の場合もあり、心の休まる暇がない。当然生活などを考え、「研究を諦めるか、方向性を変えるか」といった選択をしなければいけない人は多いと思います。その選択肢の一つに、うちのようなベンチャーがあってもいいですよね。
逆に再びアカデミアや、さらに小さなベンチャーに進むようなキャリアもあり得ますかね?ITエンジニアの世界だとアーリーフェーズのスタートアップばかり渡り歩いている人も居ますよね。
金成さん: 大いにあると思います!うちは今成長期なので、このタイミングで参加すれば小規模なチームから大規模なチームに成長する過程が体験できます。その中でやっぱりスモールチームがいいとなれば別のスタートアップに行ってもいいのではないでしょうか。
石原さん: 個人的な考えですが、将来的にアカデミックに進むとしても、博士を出て一番最初にベンチャーを選ぶのはいいと思います。助教になる際にはそこまで論文数などの要件が厳しくないことも多いので、「ベンチャーで産学連携に関わっていた」ということをうまく使ってアカデミックキャリアを作ることも可能なんじゃないでしょうか。
金成さん: アカデミアに戻る選択肢もあり得ますね。当社だと論文を書ける可能性がありますし、その時には学会発表も合わせて可能になります。学会参加などで顔を広げることもできます。
論文が書けるのはいいですね!論文執筆に関するスタンスは企業によって結構違うと思うのですが、Epigeneronはどういう立場なのでしょう。
金成さん: 会社としては独自技術などを知っていただく機会となり、また会社および研究員の認知度が上がることから、自社で発表可能なものは学会発表や論文発表に積極的に取り組みたいです。
大学との共同研究は具体的にどのように進んでいるのでしょうか?先方にメンバーを出向させたりしてるんですか?
金成さん: 弘前大学はEpigeneronの創業者の藤井穂高先生と藤田敏次先生がいらっしゃって毎週議論をしているので、感覚的には一体化しているような感じですね。当社メンバーも1名弘前大学に出向していて、新技術の開発や現在の技術のファインチューニングなど、基盤技術の開発を行っています。
さらに、順天堂大学とのiPS細胞を用いた神経変性疾患の創薬標的同定を目指した共同研究も始まっていて、こちらはもう少し応用研究寄りですね。この後も他の大学との共同研究を増やしていく予定です。
現在まだ研究員が4名なので、共同研究のリソースも限られていますが、規模拡大に伴い大学に研究者を派遣するような取り組みも増えていくかもしれません。
なるほどです。ご自身を振り返ると、「博士卒のタイミングで、ベンチャーに行く」っていう選択肢はありましたか?
金成さん: 大いにありますね。元々、大学院時代にも「いつか起業して大儲けしてやろう」みたいな気持ちがあったので。なので、アカデミックキャリアの中でも社会実装できそうな技術には目を光らせていました。笑
石原さん: 僕は当時はなかったですね。。やはりある程度経験しないと分からない部分なのかな、と思います。
山田さん: 博士卒の段階では、私もなかったかな。
最後に改めて、Epigeneronの魅力をお願いいたします!
金成さん: これまでは創薬の種となる、創薬標的の探索研究を主にやっていたのですが、これからは医薬品候補化合物にいたるまでの創薬研究までをやりたいと考えています。今は移行期なので、タイミング的にはどちらも学ぶことができる。
この経験は製薬系の民間企業の研究者としては強みになると思います。また、当然ベンチャーなのでリスクはありますが、その分ストックオプション制度など上場した際の大きな見返りにつながる仕組みもあります。幅広い将来の選択肢を見据えながら、上場の夢を一緒に追うことができるのが弊社の魅力なのではないかと思います!
Epigeneronに話を聞こう
Epigeneronでは、遺伝子発現制御薬の創薬に関わる研究員を募集しています。
「アカデミアからの鞍替え」をお考えの若手研究者の皆様は、ぜひお気軽にお話を聞いてみてください!
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