みなさまはじめまして、小林といいます。
私は大学院で土壌について研究しています。
ドジョウではないです、土壌です!!!
(↑土壌学業界の鉄板ジョーク)
はい。
土壌学はざっくり言うと大きく二つに分かれます。土壌の植物の栄養や肥料に着目し、植物の培地としての観点からよりよい作物生産の方法を探すエダフォロジーと、土壌を独自の機能、構造、形態を持つものとみなして成り立ちや性質を研究するペドロジーに分かれます。私は後者のペドロジーと呼ばれる分野の研究を東北の山で行っています。地味ですがとても面白い学問です。
そんな土壌学者の必須アイテムはスコップです。
私たちの研究は1m × 1m × 1m程度の穴を掘って土壌の断面を観察することから始まります。土壌の断面は土壌層位と呼ばれるいくつかの層位に分かれ、構造、色、固さ、質感が異なります。
これらは堆積作用によって生じる地層とは異なり、有機物の集積や鉄・アルミニウムの溶脱などの土壌生成作用と呼ばれる物によって層位分化されたものです。土壌の断面の形態からは土壌が形成された環境やその歴史、つまり生い立ちを読み取ることができます。
土壌学者は断面の観察とその後の化学分析の結果を統合させることで、土壌の性質を明らかにします。ペドロジスト (= ペドロジー研究者)には土壌を掘って、断面を見ている瞬間が研究の醍醐味という方が多く、私も穴を掘ることに幸せを感じます。
今回はそんな土壌の成り立ちを研究している私が、いつかこの場所の土は掘ってみたいなという日本国内の場所を勝手にランキングして、勝手に発表したいと思います(マジで個人的な興味です)。私は山の標高が高い場所 (亜高山帯~高山帯)の土壌を研究対象にしており、とにかく日本のいろんな山の土を掘りたい!と常日頃思っています。具体例としては、SNSに上がっているの山の写真から露頭を見つけてはニヤニヤしています。
それでは第3位から、スタートです!
第3位 夕張岳:北海道
第3位は北海道の夕張岳です。
夕張岳は蛇紋岩と呼ばれる地質で構成されています。蛇紋岩には重金属が多く含まれているので、生成する土壌もユニークな土壌になります。今の研究では高山植物下の土壌も扱っているので、特に高山植物の下の蛇紋岩からできる土壌はどんなものだろう?と妄想が膨らみます。
ちなみに、蛇紋岩の下にできる土壌はこんな感じです
土壌の写真集(PDF)https://t.co/cVZGdCelaY
— 農研機構 農業環境研究部門 (@niaes) March 1, 2021
E3 塩基性暗赤色土は、おもに超塩基性岩(かんらん岩、蛇紋岩)からできる、pHの高い土壌。超塩基性岩が地表に出ている場所に分布する。 pic.twitter.com/Nr3QrRq46h
第2位 笹ヶ峰:愛媛県・高知県
第2位は笹ヶ峰です。
標高が1,860 mで、山頂付近がササの草原になっていることが特徴です。学部は四国の大学に通っていたので行きたいと思いつつ、結局いけませんでした。萌ポイントはやはりササ草原です。個人的にササは面白いと思うんですよね。南方系でありながら標高が高いところまで生育できますし、根のバイオマス生産量も多いですし。ササ草原の下には有機物が集積した土壌が生成することが報告されているので、黒い断面に萌えたいですね。ちなみにですが、僕が経験したササ草原下の土壌の調査は根が多くてサンプリングが大変でした。邪魔な枝を切ったら竹槍みたいに尖ってしまって手が傷だらけになってしまって・・。その苦労を超えてでも掘ってみる価値があると思います!
第1位 大雪山:北海道
第1位は北海道の大雪山です。
とにかく、高山帯の土壌を掘りたい!!!積雪期間が長いので、厚く有機物が堆積した層が見れるかも!有機質層はめっちゃおもしろいです。気候、土壌動物、リターなどの物質循環を反映した形態になります。北海道の高山帯の土壌は僕の知る限りほとんど調査されていないので、一度訪れてみたいです。
おわりに
私たちの身近にある土壌ですが、わかっていないことはまだまだたくさんあります。
まだ見ぬ謎を見つけるためにスコップを持って日本、いや世界の土壌を掘っていきたいと思います。
注)土壌学者は土壌を掘るにあたって、土地の所有者や行政に適切な許可を申請して調査しています。勝手に土を掘るのは厳禁です!
ちなみに、日本ペドロジー学会は土壌調査ハンドブックを出版しています。土壌の専門家だけでなく、その隣接分野に関わっている人にも土壌調査ができるように書かれているので、ぜひ手に取ってみてください。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784826802284
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