「次世代研究者挑戦的研究プログラム」って何?学振との違いは?博士課程に進めばお金貰えるって本当?調べてみました!


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JSTの「次世代研究者挑戦的研究プログラム」の採択結果が発表されて、主にPIの先生方を中心に、アカデミアのTLが沸いております。

とはいえ、学生の方々などはこの盛り上がりを見ても、

とか、

といった感想の方も多いのではないかと思います。

そんな人向けに、「次世代研究者挑戦的研究プログラム」について調べてみました!

学振DCとの違い(給与待遇)

学振DC

研究奨励費(給与のような何か) 月額20万円(年額240万円) + 研究費年間~150万円 = 390万円

次世代研究者挑戦的研究プログラム:

研究奨励費(給与のような何か) 年額220万円 + 事業統括配分経費(NEW!)70万円 = 290万円

単純に生活に充てられる研究奨励費は学振の方が若干高いですが、あまり変わりません。
一方、研究費を含めた一人当たりの支給総額は年間100万円ほど違います。しかし、「研究費」ではなく「事業統括配分経費」なのが気になります。これってなんなんでしょう?

事業統括配分経費

事業統括配分経費は大学が利用方法を決められるお金で、具体的には以下のような使途が想定されているようです。

Q4-1 事業統括配分経費はどのような使途が想定されるのか。
A4-1 事業統括配分経費の使途としては、研究奨励費(生活費相当額)や研究費の形で学生へ配分することが可能です。さらに、キャリア開発・育成コンテンツの準備・実施等に係る経費として活用し、当該コンテンツを通じたサービスや役務の形で学生への還元を行うとすることも可能とします。ただし、純粋な事務局経費等、学生への還元が見込まれないものは不可とします。内容については、応募時及び計画書作成時等に精査します。なお、本事業では、事業統括の人件費・謝金は支出できません。また、JST から支出される研究奨励費等及び事業統括配分経費とは別に、大学独自の取り組みとして、研究奨励費(生活費相当額)及び研究費の追加支給やキャリア開発・育成コンテンツ等の拡充、支援体制の整備等が図られることが重要であり、それらの内容は応募時の審査や実施時のモニタリング・評価に際しての重要な判断材料となります。

https://www.jst.go.jp/jisedai/dl/faq-2021.pdf

研究奨励費としても配分可能なようなので、もし大学が全額研究奨励費としての利用を認めれば、年額290万円で生活費は学振よりだいぶ増えますね!とはいえ、研究奨励費の利用方法も審査対象となるようなので、単純に学生に支給されるということにはならなそうです。この辺りの運用も、各大学で色々と違いが出そうですね!

学振DCとの違い(人数)

学振DC:

2021年度の採択者は730人(DC1)+ 1,132人(DC2) = 1862人

次世代研究者挑戦的研究プログラム:

初年度の採択者は合計5450人 (ただし、B日程公募も控えているためまだ増える可能性あり)

ざっくり学振DCの3倍程度の人数が採択されているので、学振の人数が4倍になるようなイメージですかね?年間の博士課程進学者数が1.5万人程度で、社会人博士などの存在も考えると半数以上の博士学生には給与が支給されるような制度と言えるのではないでしょうか。

学振DCとの違い(審査)

学振DC:

科研費と同じで、JSPS(日本学術振興会)に申請書類を応募し、JSPSが審査

次世代研究者挑戦的研究プログラム:

JST(科学技術振興機構)によって採択された各大学による審査

こればかりは実際の運用が始まらないとわからない部分です。大学によっては「グリーントランスフォーメーション(GX)」や「地域連携」「食料生産向上」など、具体的な支援のテーマを掲げているところもあるので、もしかしたら分野ごとに重点的に配分するなどの措置もあるのかもしれません。

で、自分どうすればいいんすか?何も考えず博士行けばお金貰えるんすか?

まず、博士進学するにあたっては進学先が「次世代研究者挑戦的研究プログラム」に採択されているかどうかは大きな判断基準となりそうです。採択大学であれば平均以上の能力と運があれば支給されるはずの毎年の生活費が、採択されていない大学では採択率2割程度の学振DCにかけるしか無くなってしまうからです。そんなことで研究テーマや進学先を検討するのどうなん?という気持ちもありますが、220万、220万、220万。まぁまぁ大きいですよね。
逆に言えば、採択大学であればかなりリスク低く博士進学ができるので、「漫然と民間就職するよりは博士課程で突出した専門性を身に付け、博士新卒年収1000万目指すコース」とかも考えられるかもしれません。とにかく、金銭的な不安がだいぶ減るはずなので、必ずしも「アカデミアに骨を埋めたい」「研究活動で人類のステージを高めたい」という気合がなくても、もっとライトな気持ちで博士進学ができる世界になるのは間違いなさそうです。

いずれにせよ採択大学でなければ恩恵はないので、もし自身の大学が採択されていなければ、これを機に外部進学を考えるのも良いのではないでしょうか。

外部進学っていっても外の先生なんか知らんし・・・

tayo.jp という大学院生の募集情報がいっぱい載っているサービスがあります。「次世代研究者挑戦的研究プログラム」に採択されている大学も多く、このサービスに掲載いただいている先生方は皆さん外部進学者を積極的に募集されています。「博士進学はしたい」「しかし生活費は不安」という方は是非ご参照いただければと思います。本来募集要項などにしか書いていない受験科目の情報などもある程度まとまっているので、自分が受けられる大学院かを簡単に検討できます!

おわりに

いかがでしたでしょうか?

来年度から博士学生の決定と支援が始まるようなので、今の修士学生にとっては大きなチャンスですね!また、採択されていない大学の修士学生は、外部進学を考える大きな動機になるのではないかと思います。

「一部の大学を採択することは選択と集中の再生産になる」というような批判もありますが、

・人数を増やせばJSTの一元管理より大学ごとの分散管理の方がメリットがある
・大学ごとに制度を作るのなら一度に全ての大学に導入は難しい

など考えると初年度は仕方ないかな、とも思います。
副産物として外部進学にメリットが生まれて、人材流動が加速するのも悪くはなさそう。とはいえ、地方大など採択されていない大学の博士学生にも支援は必要なので、今後はそちらもフォローできるような政策が生まれるといいな、と思います。


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