Zoonotic risk factors associated with seroprevalence of Ebola virus GP antibodies in the absence of diagnosed Ebola virus disease in the Democratic Republic of Congo (コンゴ民主共和国でエボラウイルス病と診断されていない場合のエボラウイルスGP抗体の血清有病率に関連する人獣共通の危険因子) を読んで… 論文の概要 この論文はコンゴ民主共和国でエボラウイルス病と診断されていない人を対象とした、GP抗体の血清有病率に関連する人獣共通感染症の危険因子について述べている論文でした。 材料と方法 サンプルはブエンデ、カボンドディアンダ、キクウィト、ヤンブクの4箇所から計1,366人の血清サンプルを使用して行われました。これらのサンプルを使用して、EBOV GPを抗原としてEBOV GPIgGに対する血清反応性をELISA法(Alpha Diagnostic International, Inc.)を使用して行われました。血清反応の基準は他の論文をもとにして、4.7 units/mLで行われました。さらにこの結果をもとにして、年齢、性別、医療従事者別に区別して統計的分析が行われました。 結果 今回行われた実験では血清反応が示された患者数は全体の内、113人(8.3%)に上りました。また、サンプルのほとんどは男性で(62.6%)、26~59歳(78.7%)でした。なお興味深いことに、陽性者のうち3分の2は牧師や医療現場で働いている人々でした。 僕の感想 僕はこの論文を読んで、ほかの感染症(SARS-CoV-2, Influenza, Lassa, Nipah)と比較し、どの感染症にも不顕性感染又は非申告者が一定数存在することが分かり、これからは申告者だけではなくこの様な人々についても心理的、ウイルス学的など様々なアプローチで調査していく必要性があることがわかりました。また、このような調査は様々な感染症で、様々な場所を対象として調査すると意外性があり、面白そうだなと思いました。
Reservoir host studies of Lloviu virus: first isolation, sequencing and serology in Schreiber’s bats in Europe (Lloviuウイルスの保存宿主研究:ヨーロッパのSchreiberコウモリにおける最初の分離、配列決定、血清検査) を読んで… 論文の概要 この論文ではMiniopterus schreibersiiとコウモリに外部寄生するハエから分離された、感染性のLloviu cuevavirus(以後LLOV)の初めての分離例について述べている論文でした。 僕の一言感想 これまでフィロウイルスはコウモリ、サル、ブタなど多岐にわたる種類の哺乳動物から検出されていましたが、分離に至っている種はマールブルグウイルスのみでした1, 2)。その為、今回LLOVが分離されたのはフィロウイルス科において2種類めであり、とても興味深い結果だと思いました。 また、今回の分離では驚くことにコウモリと寄生ハエの両方から分離されたため、将来これをもとにアフリカでも寄生生物におけるフィロウイルスの検出を行ってみたいです。
Field Investigations of an Outbreak of Ebola Hemorrhagic Fever, Kikwit, Democratic Republic of the Congo, 1995: Arthropod Studies (1995年にコンゴ民主共和国のキクウィットで発生したエボラ出血熱の現地調査。節足動物の研究) を読んで… 論文の概要 この論文は過去のキクウィトで発生したエボラ出血熱の6か月間に上る流行の自然史を明らかにするために節足動物を対象としたサンプリングに関する研究でした。 材料と方法 今回の研究では、キクウィトにてサンプル用節足動物が1995年6月10日から7月14日までライトトラップやその他トラップを使用して収集されました。初めは吸血種に焦点を当てていましたが、非吸血種節足動物のサンプルもサンプリングされました。 サンプルはキクウィトの研究室に運ばれ、短時間、低温による固定が行われました。その後、アメリカに輸送されプールされたのちに-70℃で保存されました。その後モルモットへの頭蓋内接種とVero細胞による培養がBSL4研究室にて行われました。 結果 計34,985の節足動物標本が収集され、その内27,843がウイルス分離のために選択され、FamilyまたはSpeciesごとに識別されました。また、テストされた15,118匹(54%)の蚊のうち、4,651匹(31%)はネッタイイエカとアノフェレス(セリア)種(おそらくガンビエハマダラカ)であり、これらはすべてキクウィトの都市部の屋内で捕獲されました。 その後、培養が試みられましたが、どのスーパープールからもEBOウイルスは分離されませんでした。屋内サイトでバックパック吸引器によって捕獲されたハマダラカ(セリア)種のスーパープールから、ブニヤウイルス(ブワンバグループ)の単一の分離株が作成されました。その後、ウイルスは市内の家の中から来た元のプールから再分離されました。他の分離株は作成されませんでした。 僕の一言感想 フィロウイルスの分離は②で述べたように現在2種類のみ行われており、今後様々な場所や動物種で発見されることが期待できました。また、この研究では分離には至りませんでしたが、②の論文ではハエからの分離に成功しているため、コウモリに関連する節足動物を対象に再調査をしたら面白そうかなと思いました。
Optimizing noninvasive sampling of a zoonotic bat virus (人獣共通コウモリウイルスの非侵襲的サンプリングの最適化) を読んで… 論文の概要 この論文ではねぐら下シートサンプリングについて理論的に研究することでサンプリングバイアスを定量化する方法を述べていました。 僕の一言感想 僕には数学が多かったのでよくわかりませんでした。統計学をもっと学ばないといけないことを身に染みて実感できたためそろそろ統計学の本でも買って勉強しようと思います。
Uncovering Viral Protein-Protein Interactions and their Role in Arenavirus Life Cycle (ウイルスのタンパク質間相互作用とアレナウイルスのライフサイクルにおけるそれらの役割の解明) を読んで… 論文の概要 この論文ではアレナウイルスの細胞内ライフサイクルにおけるZタンパク質の重要性について述べている総説っぽい論文でした。 この論文で出てきた知識 この論文では、Zタンパク質を中心にNP, L, GPとの相互作用に焦点を当てて現在(2012年)解明されている知識を紹介していました。 登場したこの論文の知識は以下の通りです。 ・Zタンパク質はLポリメラーゼと直接相互作用してウイルスRNA合成を阻害する。 ・LにおけるSDDドメインとH1189がZとの相互作用に密接に関連している。 ・ZはLの触媒予測部位に対するアンタゴニストとして働く。 ・NPは哺乳類細胞内でNP同士の複合体を形成して多量体を形成することができる。 ・LASVにおけるヌクレオカプシドの接触にはL91が必須。 ・MopeiavirusはYLCLモチーフを保持しておりESCRTに関連するAlix/AIP1との相互作用に関係している。 ・Z-N複合体はGPの発現量に影響する。 etc… 僕の一言感想 この論文ではアレナウイルスの細胞内ライフサイクルにおけるZタンパク質の重要性がとてもよくわかり面白かったです。また、アレナウイルスはまだわかっていないことも多く、とても興味深いウイルスであることもこの論文から分かりました。
Review of Mammarenavirus Biology and Replication (Mammaarenavirusの生物学と複製の総説) を読んで… 論文の概要 この論文ではMammarenavirusにおける知見を述べている総説論文でした。 論文の知識 ・レセプター:TAM family tyrosine kinase receptor群, TIM family receptor群, C-type lectin, AxI, JuninvirusにおいてはVGCC(Ca2+チャネル)
New Hosts of The Lassa Virus (ラッサウイルスの新しい宿主) を読んで… 論文の概要 この論文ではこれまでのラッサウイルスの宿主(Mastomys natalensis)の代替宿主について述べている論文でした。 材料と方法 今回使用したサンプルはナイジェリア南西部に位置するKako、ナイジェリア東部のOnmba Abena、ギニア沿岸部Madina Oulaから取得されました。その後、完全なゲノム配列の決定→系統発生解析の順で行われました。 結果 結果として、H. pamfiとM. erythroleucusからラッサウイルスが検出されたため、この二種類の齧歯類がラッサウイルスの宿主であることが明らかになりました。 僕の一言感想 この論文を読んで僕もいつかウイルスの分離と検出を行ってみたいという思いが強くなりました。
Molecular Mechanism for LAMP1 Recognition by Lassa Virus (ラッサウイルスによるLAMP1認識の分子メカニズム) を読んで… 論文の概要 この論文では、生化学、構造生物学を使用して、LAMP1とGPCのbinding mechanismについて述べている論文でした。 材料と方法 今回使用した材料はESF-921細胞培養培地とそのほか発現ベクター作成系のツールでした。 これらを使用して発現ベクターの構築→タンパク質の発現と精製→結晶化→データ収集→保全分析→プルダウン法→SPR測定→ELISA→CD分析の順で分析が行われました。 結果 Zoonotic risk factors associated with seroprevalence of Ebola virus GP antibodies in the absence of diagnosed Ebola virus disease in the Democratic Republic of Congo (コンゴ民主共和国でエボラウイルス病と診断されていない場合のエボラウイルスGP抗体の血清有病率に関連する人獣共通の危険因子) を読んで… 論文の概要 この論文はコンゴ民主共和国でエボラウイルス病と診断されていない人を対象とした、GP抗体の血清有病率に関連する人獣共通感染症の危険因子について述べている論文でした。 材料と方法 サンプルはブエンデ、カボンドディアンダ、キクウィト、ヤンブクの4箇所から計1,366人の血清サンプルを使用して行われました。これらのサンプルを使用して、EBOV GPを抗原としてEBOV GPIgGに対する血清反応性をELISA法(Alpha Diagnostic International, Inc.)を使用して行われました。血清反応の基準は他の論文をもとにして、4.7 units/mLで行われました。さらにこの結果をもとにして、年齢、性別、医療従事者別に区別して統計的分析が行われました。 結果 今回行われた実験では血清反応が示された患者数は全体の内、113人(8.3%)に上りました。また、サンプルのほとんどは男性で(62.6%)、26~59歳(78.7%)でした。なお興味深いことに、陽性者のうち3分の2は牧師や医療現場で働いている人々でした。 僕の感想 僕はこの論文を読んで、ほかの感染症(SARS-CoV-2, Influenza, Lassa, Nipah)と比較し、どの感染症にも不顕性感染又は非申告者が一定数存在することが分かり、これからは申告者だけではなくこの様な人々についても心理的、ウイルス学的など様々なアプローチで調査していく必要性があることがわかりました。また、このような調査は様々な感染症で、様々な場所を対象として調査すると意外性があり、面白そうだなと思いました。
Reservoir host studies of Lloviu virus: first isolation, sequencing and serology in Schreiber’s bats in Europe (Lloviuウイルスの保存宿主研究:ヨーロッパのSchreiberコウモリにおける最初の分離、配列決定、血清検査) を読んで… 論文の概要 この論文ではMiniopterus schreibersiiとコウモリに外部寄生するハエから分離された、感染性のLloviu cuevavirus(以後LLOV)の初めての分離例について述べている論文でした。 僕の一言感想 これまでフィロウイルスはコウモリ、サル、ブタなど多岐にわたる種類の哺乳動物から検出されていましたが、分離に至っている種はマールブルグウイルスのみでした1, 2)。その為、今回LLOVが分離されたのはフィロウイルス科において2種類めであり、とても興味深い結果だと思いました。 また、今回の分離では驚くことにコウモリと寄生ハエの両方から分離されたため、将来これをもとにアフリカでも寄生生物におけるフィロウイルスの検出を行ってみたいです。
Field Investigations of an Outbreak of Ebola Hemorrhagic Fever, Kikwit, Democratic Republic of the Congo, 1995: Arthropod Studies (1995年にコンゴ民主共和国のキクウィットで発生したエボラ出血熱の現地調査。節足動物の研究) を読んで… 論文の概要 この論文は過去のキクウィトで発生したエボラ出血熱の6か月間に上る流行の自然史を明らかにするために節足動物を対象としたサンプリングに関する研究でした。 材料と方法 今回の研究では、キクウィトにてサンプル用節足動物が1995年6月10日から7月14日までライトトラップやその他トラップを使用して収集されました。初めは吸血種に焦点を当てていましたが、非吸血種節足動物のサンプルもサンプリングされました。 サンプルはキクウィトの研究室に運ばれ、短時間、低温による固定が行われました。その後、アメリカに輸送されプールされたのちに-70℃で保存されました。その後モルモットへの頭蓋内接種とVero細胞による培養がBSL4研究室にて行われました。 結果 計34,985の節足動物標本が収集され、その内27,843がウイルス分離のために選択され、FamilyまたはSpeciesごとに識別されました。また、テストされた15,118匹(54%)の蚊のうち、4,651匹(31%)はネッタイイエカとアノフェレス(セリア)種(おそらくガンビエハマダラカ)であり、これらはすべてキクウィトの都市部の屋内で捕獲されました。 その後、培養が試みられましたが、どのスーパープールからもEBOウイルスは分離されませんでした。屋内サイトでバックパック吸引器によって捕獲されたハマダラカ(セリア)種のスーパープールから、ブニヤウイルス(ブワンバグループ)の単一の分離株が作成されました。その後、ウイルスは市内の家の中から来た元のプールから再分離されました。他の分離株は作成されませんでした。 僕の一言感想 フィロウイルスの分離は②で述べたように現在2種類のみ行われており、今後様々な場所や動物種で発見されることが期待できました。また、この研究では分離には至りませんでしたが、②の論文ではハエからの分離に成功しているため、コウモリに関連する節足動物を対象に再調査をしたら面白そうかなと思いました。
Optimizing noninvasive sampling of a zoonotic bat virus (人獣共通コウモリウイルスの非侵襲的サンプリングの最適化) を読んで… 論文の概要 この論文ではねぐら下シートサンプリングについて理論的に研究することでサンプリングバイアスを定量化する方法を述べていました。 僕の一言感想 僕には数学が多かったのでよくわかりませんでした。統計学をもっと学ばないといけないことを身に染みて実感できたためそろそろ統計学の本でも買って勉強しようと思います。
Uncovering Viral Protein-Protein Interactions and their Role in Arenavirus Life Cycle (ウイルスのタンパク質間相互作用とアレナウイルスのライフサイクルにおけるそれらの役割の解明) を読んで… 論文の概要 この論文ではアレナウイルスの細胞内ライフサイクルにおけるZタンパク質の重要性について述べている総説っぽい論文でした。 この論文で出てきた知識 この論文では、Zタンパク質を中心にNP, L, GPとの相互作用に焦点を当てて現在(2012年)解明されている知識を紹介していました。 登場したこの論文の知識は以下の通りです。 ・Zタンパク質はLポリメラーゼと直接相互作用してウイルスRNA合成を阻害する。 ・LにおけるSDDドメインとH1189がZとの相互作用に密接に関連している。 ・ZはLの触媒予測部位に対するアンタゴニストとして働く。 ・NPは哺乳類細胞内でNP同士の複合体を形成して多量体を形成することができる。 ・LASVにおけるヌクレオカプシドの接触にはL91が必須。 ・MopeiavirusはYLCLモチーフを保持しておりESCRTに関連するAlix/AIP1との相互作用に関係している。 ・Z-N複合体はGPの発現量に影響する。 etc… 僕の一言感想 この論文ではアレナウイルスの細胞内ライフサイクルにおけるZタンパク質の重要性がとてもよくわかり面白かったです。また、アレナウイルスはまだわかっていないことも多く、とても興味深いウイルスであることもこの論文から分かりました。
Review of Mammarenavirus Biology and Replication (Mammaarenavirusの生物学と複製の総説) を読んで… 論文の概要 この論文ではMammarenavirusにおける知見を述べている総説論文でした。 論文の知識 ・レセプター:TAM family tyrosine kinase receptor群, TIM family receptor群, C-type lectin, AxI, JuninvirusにおいてはVGCC(Ca2+チャネル)
The Whitewater Arroyo Virus: Natural Evidence for Genetic Recombination (ホワイトウォーターアロヨウイルス:タカリベ血清複合体ウイルス(アレナビリダエ科)間の遺伝子組換えの自然な証拠) を読んで… 論文の概要 この論文は、ホワイトウォーターアロヨウイルス(WWAV)の遺伝子が新世界アレナウイルスのClade A, Clade Bの両方がクロスオーバーする事で成り立っている事について述べている論文でした。 結果 系統解析(NJ, MP)の結果、WWAVのNはClade Aから、WWAVのGPCはClade Bからそれぞれ受け継がれていることがわかりました。また、この結果からWWAVは宿主動物の中で2種類のウイルスが合併感染して生じると考えることができます。 僕の一言感想 今回の論文を読んで、WWAVはClade AともClade Bともいえないことがわかり、とても興味深かったです。また、GPCがClade Bに近いということは、TfR1がレセプターとなるのかが気になりました。
Comparison of the Innate Immune Responses to Pathogenic and Nonpathogenic Clade B New World Arenaviruses (病原性および非病原性のクレードB新世界アレナウイルスに対する自然免疫応答の比較) を読んで… 論文の概要 この論文は、Junin virus(JUNV)とTacaribe virus(TCRV)の免疫応答について述べている論文でした。 材料と方法 使用した材料と方法はA549細胞、pseudotypeJUNV、TCRVを使用し、RT2-PCR arraysを使用して、ISGとIFNの増加について二つのウイルス間で比較しました。 結果 TCRVはJUNVよりも強くIFN-Iを誘導することが明らかになりました。ここから、JUNVNPとJUNVZはTCRVNPとTCRVZよりも強くIFN-I拮抗阻害を行うことが分かりました。 僕の一言感想 RT2-PCR arraysを使用した解析はとても興味をそそられました。また、NWarenaの免疫回避メカニズムが少しわかり、面白かったです。
ウイルス関連の論文を読むのが趣味の中学生(@mnswAls69HvSTyZ)による、一ヶ月に読んだ論文を淡々と挙げていく連載企画。